白内障
白内障は、眼の中でレンズの役目をしている「水晶体」が濁り、視力が低下する加齢性の病気です。
水晶体が濁ると、曇ったレンズを通して見るのと同じように見えづらくなります。
水晶体に発生した濁りは、目薬で取り除くことはできないため、根治的治療は手術しかありません。
白内障手術では、濁った水晶体を超音波で細かく砕きながら吸い出し、水晶体のかわりに人工の「眼内レンズ」挿入します。


当院では基本的には日帰り白内障手術を行っておりますが、ご希望によって1泊入院手術も対応しています。
当院の白内障手術の特徴
1 短時間・低侵襲
短時間・低侵襲の施術によって、患者様の身体的・精神的負担の少ない手術を行います。
- 白内障手術は、目薬による点眼麻酔で行います。
- 切開創は3㎜以下で、手術後の痛みや異物感が軽減されます。
- 手術時間は3~5分と短時間です。
2 難症例にも対応
通常の白内障だけでなく、緑内障や網膜硝子体疾患との同時手術、チン小帯の脆弱、成熟白内障、小瞳孔眼、角膜内皮細胞の減少、85歳以上の高齢の方の白内障手術、アトピー性白内障などの難しい症例にも対応いたします。
また、水晶体脱臼、水晶体核落下などが起こった場合は、通常の白内障手術だけではなく硝子体手術が必要になり、術者がいない施設では大学病院等へ緊急搬送されることになりますが、当院では追加処置が必要になった場合でも、即時にその場で対応いたします。
✤チン小帯の脆弱
水晶体を支えている「チン小帯」という繊維状の組織が著しく退化していると、通常の方法による眼内レンズの挿入ができません。この場合は、水晶体嚢の安定化のため水晶体嚢拡張リング(CTR)を使用するか、もしくは後日、眼内レンズを縫い付けて固定する手術を行います。
✤成熟白内障
白内障が進行して成熟白内障になると、前嚢切開という処置の際に、前嚢と水晶体皮質が癒着して切開しづらくなり、これがうまくできないと後嚢が破れて水晶体落下の要因にもなるため、より慎重な手技を要します。
また、水晶体の核が硬くなっているため、水晶体を砕くときの超音波の出力が大きくなり、目の組織に対する負担も大きくなります。核が著しく硬く水晶体を砕いて吸い出すことができない場合は、水晶体の核を丸ごと取り出す手術(水晶体嚢外摘出術)を行うこともあります。
✤小瞳孔眼・散瞳不良眼
白内障手術では、事前に点眼薬で瞳孔を大きく開いて手術を行います。この時、何らかの原因で小瞳孔、散瞳不良(瞳孔が開きにくい)がある場合は、追加で処置が必要になります。
小瞳孔だけならば、普通よりも少し時間がかかるだけで手術は問題なく終わりますが、小瞳孔に加えてチン小帯の脆弱、成熟白内障などがあると、手術の難易度が上がります。
✤角膜内皮細胞の減少
角膜内皮細胞は、角膜の一番内側にある細胞で、角膜内の水分量を調節し透明性を維持しています。
角膜内皮細胞の密度は1㎟あたり2,000個以上が正常とされていますが、コンタクトレンズの長期装用や外傷、過去の手術侵襲などにより障害されると細胞が死滅します。500個を下回ると水疱性角膜症という状態になりますが、角膜内皮細胞には再生能力がないため、改善させるには角膜移植が必要になってしまします。
白内障手術を受ける場合にも、手術の侵襲によって角膜内皮細胞は減少しますので、元々角膜内皮細胞が少ない方は特に慎重かつより短時間・低侵襲の手術が求められます。
✤85歳以上の高齢の方の白内障手術
高齢者では年齢が高くなればなるほど、チン小帯の脆弱、成熟白内障、小瞳孔眼を合併していることが多く、手術の難易度が上がります。また、身体の変形で仰向けになれなかったり、術中に体が動いてしまったりすると、更に難易度が上がります。
✤アトピー性白内障
アトピー性皮膚炎が原因となるアトピー性白内障の発症年齢は、20代や30代に多く認められます。
急激に進行するため、短期間で成熟白内障になっていたり、チン小帯の脆弱、網膜剥離などを合併していることも多く、手術の難易度が上がります。
✤水晶体脱臼・水晶体核落下
白内障手術では、ごく稀に水晶体を包んでいる袋が破れて(後嚢破損)、眼の奥へ水晶体核が落ちてしまったり(水晶体核落下)、チン小帯の脆弱で挿入した眼内レンズが支えられない(水晶体脱臼)などが起こる場合があります。この場合は追加で硝子体手術が必要になりますが、当院ではその場で対応いたします。
3 見え方の質の向上
患者様の目の状態に合わせた手術の方法や眼内レンズの選択をし、より良い裸眼視力を目指します。
- 術前の精密な検査データの解析により、最適なレンズの選択をします。
- 乱視矯正用のトーリック眼内レンズを積極的に使用し、術後の乱視の軽減に取り組んでいます。
- 球面収差も考慮して眼内レンズを選択し、術後の見え方の質にこだわっています。
- 白内障手術ガイドシステムVERIONの導入により、より精度の高い手術を行っています。
4 最適な眼内レンズの選択
白内障手術で用いる眼内レンズには、眼鏡やコンタクトのように度が入っており、手術をすることで、白内障だけでなく、近視・遠視・乱視などの屈折異常や老眼も同時に治療することが可能です。
手術で使用する眼内レンズには、遠くか近くの1点にピントが合う単焦点眼内レンズと、複数の箇所にピントが合う多焦点眼内レンズの2種類がありますが、どの眼内レンズを入れても、自由にピントが合わせられる若い頃の見え方に戻るわけではありません。
くっきりとした見え方を求める場合は単焦点眼内レンズ選択しますが、遠くと近くとどちらかの距離にしかピントが合わず、手術後もメガネが必要です。
一方で、多焦点眼内レンズを選択した場合は眼鏡の使用頻度は少なくなりますが、レンズに入る光を遠方・近方・中間距離に振り分けて広い範囲に焦点を合わせる構造になっているため、ピントがやや曖昧になり、くっきり感では劣ります。
このように、眼内レンズにはそれぞれ特徴があり、患者様によっては向き不向きもあります。
今までの見え方、手術後の見え方の希望、職業や趣味をお聞きし、患者様のライフスタイルに合わせて眼内レンズを選択します。
単焦点レンズ(保険診療)


(近くを見るときは老眼鏡が必要)


(日常生活では眼鏡かコンタクトが必要)

正常な見え方
遠くも近くも見えています。

術後の見え方
(ピントを遠くに合わせた場合)
遠くは見えていますが手元はぼやけて見えるので老眼鏡が必要です。
多焦点眼内レンズ(選定療養・自由診療)
老眼治療に対応した遠近両用の眼内レンズです。
日常生活では、ほとんど眼鏡を使わずに過ごせます。

単焦点眼内レンズの見え方
遠くは見えますが手元はぼやけます。

多焦点眼内レンズの見え方
遠くから手元まで概ね良好に見えます。
5 術後合併症にも対応
合併症が起こる頻度は極めて少ないですが、絶対に起こらないとは言えません。
万が一、合併症が起きた場合には、追加で緊急の処置や手術が必要になることもあります。当院では合併症が起こった場合でも、最新の医療技術で迅速に対応いたします。
6 最新の医療機器の導入
当院では、最新の医療機器を導入し、精度の高い安全な手術をご提供します。

カールツァイス
手術顕微鏡OPMI Lumela T

ライカ
手術顕微鏡 Proveo8

白内障手術ガイドシステムVERION /Alcon
手術前に、角膜屈折力と軸の測定、眼表面(強膜血管、輪部や虹彩)の特徴を把握し、そのデータをもとに手術計画を立てることができます。
手術時にはそのデータを顕微鏡に取り込んで、角膜の切開位置・水晶体の前嚢切開位置、眼内レンズの固定位置などを、デジタルマーカーで表示してガイドします。

白内障・硝子体手術装置 コンステレーションビジョンシステム/Alcon
白内障・硝子体手術を同時に行う事ができる手術装置です。
高性能で安全性が高く、低侵襲な手術が可能です。
さらに、眼内レーザー、ガス注入、シリコンオイル注入などの幅広い機能が搭載されており、幅広い術式にも対応できる多機能な手術装置です。

前眼部OCT CASIA2 / TOMEY
非接触・非侵襲で、前眼部(角膜から水晶体まで)の3次元撮影が可能な装置です。
白内障手術前後の検査やICL手術前後の検査、角膜疾患の検査、閉塞隅角など緑内障検査に有用です。
白内障手術前の検査においては、角膜の形状や乱視の状態、前眼部の状態を詳細に分析し、手術の適応、最適な眼内レンズの選択にも有用な情報となります。