色覚異常
色覚異常とは遺伝による錐体細胞の異常で、色の区別がしにくい状態をいいます。
男性の20人に1人、女性の500人に1人に見られます。
単に色が見えないのではなく、それぞれの色みがうまく感じられないため、色のあざやかさが劣って見えます。
このため、色の区別が苦手で、正常者には区別できる色が区別できない場合があります。
混同しやすい色の組み合わせ例
赤・緑・茶
どれも茶色っぽく見える
ピンク・水色・グレー
どれもグレーっぽく見える
オレンジ・黄緑
どれも茶色っぽく見える
緑・グレー
どれもグレーっぽく見える
赤・黒
どれもグレーっぽく見える
などの色の見分けがつきにくいといわれています。
間違いやすさは、色覚異常の種類や本人の自覚によって個人差がありますが、色の間違いは成長とともに減っていきます。
また、同じ色を常に誤認するわけではなく、対象が小さいときや照明が暗い場合、短時間で判断しなければならない環境条件下、疲れて判断力が低下している場合などに色誤認が起こり得ます。色覚異常は遺伝性のため治療法はありませんが、明るさ、鮮やかさ、物の形を手がかりとした学習により、色の識別能力は向上します。
職業選択の考え方
現在では、進学時に色覚異常のために入学を拒まれることはほとんどなくなっていますが、就職時には制限を受ける職種がいくつかあります。
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就業を制限される職業
鉄道運転士、航空(パイロット・管制官)、航海士、警察・自衛隊・消防・防衛庁、毒劇物取扱責任者・ふぐ調理師、オートレース選手・審判員など -
就業が困難な職業
色彩感覚を要求される仕事(画家、染色・塗装・繊維・色材料の仕事、建築家、カメラマン、デザイナー、調理師、生鮮食料品の鮮度の判定、美容師、歯科技工士)、医療関係の一部など
平成15年までは小学校で色覚検査が実施されていました。しかし、色覚異常は「差別」につながるということで、検査義務は廃止されたため、色覚異常があっても多くの方が検査を受ける機会がなくなりました。
検査を受ける機会がなくなったことで、本人も色覚異常に気付かないまま大人なり、進学・就職時のトラブルが増加しています。
- 自衛隊を受験するときに、色覚異常を指摘されて断念した
- 工業高校に進学したが、配線の色の区別がつかない
- 美容専門学校に進学したが、ヘアカラーの色の区別がつかない
- 調理師免許を取ったが、肉の焼け具合が分からない
色覚異常があると、どうしても就けない職業はありますが、うまく付き合うことで、日常生活も就業もほぼ支障はありません。
進路を決める前に検査を受けて、自分の色覚を正しく知ることが大切です。色覚検査
当院では、以下の3種類の色覚検査を実施しています。まずは、石原式色覚表でスクリーニング検査を行い、異常が疑われる場合は、希望者に「パネルD15」および「アノマロスコープ」検査を行います。
- 「パネルD15」は異常の程度(中等度以下か強度か)が知りたい場合(所要時間は15分程度)
- 「アノマロスコープ」は色覚異常の分類が知りたい場合(所要時間は30分から1時間程度)
仮性同色表(石原式色覚検査表)
正常と異常とを区別するスクリ-ニング検査です。 色覚異常者には分かりにくい色の組み合せを使って描かれている数字を読んでもらい判定を行います。
このスクリーニング検査は色覚異常の可能性を指摘するものであり、確定診断するものではありません。
正常か異常かの区別が簡単に分かりますが、正常者が異常の疑いありとされることもあります。
21表中誤りが4表以下を正常、5~7表を色覚異常疑い、8表以上を色覚異常と判断します。
色相配列検査 パネルD15
色覚異常の異常度合いを調べる(中等度以下と強度に分類する)検査です。赤、橙、黄橙、黄、黄緑、緑、青緑、緑青、青紫、紫、赤紫、と少しずつ色が変わってまたもとの赤になることを色相環といいますが、この色相環に沿って少しずつ色の違った15色のキャップをばらばらの状態から、順々に並べてもらう検査です。
色覚異常の方でも程度が軽ければ正しく並べることができますが、程度の強い人は正常とは異なる並べ方をします。その場合は1型色覚異常と2型色覚異常とで並べ方の特徴が違うため、その特徴を見て分類が可能です。しかしこの検査で異常が見られなくても“色覚正常”とは判断できないため、確定診断することはできません。
パネルD15でパスした場合は中等度以下の色覚異常、フェイル(パスしなかった)の場合は強度色覚異常と判断します。(パターンによって1型と2型に分類されます)
アノマロスコープ
色覚異常の型・分類を調べ、確定診断をする検査です。特定の光を用いて色合わせ法 (等色法) を行うことを目的とした検査です。
アノマロスコープは、上下2つに分けられた丸があり、上半分は緑→黄色→赤へと変化し、下半分は黄色の明るさ(明るい黄色・暗い黄色)を変化させて、上下の色と明るさが同一になったと認められた範囲を記録します。この座標(混色割合、黄色の強さ)の位置や範囲から診断をします。
色覚異常と向き合うために
色覚異常は、進行して悪くなるということはありませんが、治療法もありません。しかし、環境と学習によって色の識別能力は向上し、大部分の人は、実生活で支障をきたすことなく生活できます。 色の間違いやすさは、色覚異常である本人が自覚して注意することと、周囲の人々の理解によって多くの場合は解決できます。どのような状況でどのような配色を混同するのか、自分の色覚異常を正しく知り対策を講じておくことが大切です。
保護者の方へ
~お子様が、色覚異常とうまく付き合えるようサポートしましょう~
- 色の誤認が起こり得る環境を、できる限り取り除く
- 色の名前だけで説明しない、他の情報(形・大きさ・模様・輪郭など)を付け加える
- いちいち訂正しない、「これは何色?」と聞かない
- 色を使用する場合、混同しやすい配色は避ける
洋服を選ぶときは1着ずつ取り出して明るい部屋で選ばせる、急かさない、「きれいな赤いバラの花だね」などとさりげなく対象物の色を教えるなどの工夫で、本人の自尊心を傷つけずに学習できるよう配慮が必要です。